シークレット・キノコ・ガーデン
バーネット夫人の著した3大小説『小公子』『小公女』『秘密の花園』は幾度も映画化され世界中の人に愛されてきました。その中の『秘密の花園』は1909年に発表され原題は『The Secret Garden』、秘密の花園をめぐる少年と少女の成長の物語です。イギリス貴族のウォールドガーデンは強い季節風や動物の侵入から守るため、高い塀で囲まれ外からは分からないようになっています。小説では花園には鍵がかけられ外とは別世界になっていました。
さて、今年の9月は秋雨前線の停滞に台風が追い打ちをかけ、気が滅入るようなお天気が続きました。広島市は9/9の晴れ間をはさみ台風一過の9/18まで雨が降ったり止んだりです。
台風が過ぎ去り、久しぶりの晴れ間に誘われて元宇品を訪れました。赤とんぼ広場から車道を北へ歩きます。中ノ谷を見下ろしながら進むと右手に道路の石垣が現れます。ふと目をやると…人の背丈ほどもある石垣の上の斜面に瑞々しいコサージュを見つけました。
赤みを帯びた小さな花束が壁一面に飾られているように見えます。うわぁ。思わず石垣に上って目を見張ってしまいました。ここはどこなのでしょう…
戦時中、この元宇品の山中には高射砲の陣地が築かれました。その陣地構築のため、宇品山の稜線に沿って軍用道路が建設されたのです。戦後はその軍道に沿ってスカイラインが建設されたのですが、中ノ谷の北側は少し除けて道が通されたので、その当時の軍道が今でも残っているのです。
軍道は大きなU字溝のような形で、その軍道の壁面にも地面にもあちらこちらにキノコが生えて、まるでキノコの花園です。壁にはカレバキツネタケでしょうか、壁飾りのように並びます。足元にはシロハツモドキかな…落ち葉を力強く押し上げています。
足の踏み場が無いとはこのこと…白、茶色、ピンク、クリーム色と様々なキノコです。
翌日、ガイド仲間で宇品山を歩いた折、秘密の花園があるのよ!と嬉々としてお連れしたのですが、キノコ達は少々盛りを過ぎとても花園とは言い難く…長雨の後の奇跡の1日だったようです。
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美