燃える元宇品

変形菌を探していた私は大急ぎで森から出てきました。 

9月ももうすぐ終わる頃、日暮れが随分早くなってきたのです。稜線を北に向かって歩きます。時計を見るともうすぐ午後6時、夕闇と競争で赤とんぼ広場の南側を大きく曲がると… 

「うわぁ、大変!燃えてる、どうしよう~~」 

火は広場の縁に生えた大木の根元近くから燃え上がり、枝まで届いています。下草にも火が広がっていて大変なことに…。 

周辺の木にも飛び火したのか、向うの梢近くにも火が! 

きょろきょろしながら、ざわつく私を静かな空気が包みます。 

「・・・・・・」 

「夕映えなんだ…」 

陽が傾くと、太陽は斜めの角度から差し、その光は昼間より大気の層を長く通過することになります。 
大気の層を長く通過する間に青い色は届かなくなり、赤い色が残り夕焼けとなります。空気中に漂う水やほこりの粒によって様々な赤色になります。西の空から差す赤い光が、島の西側の深い森の木々のすき間を通り、ここに届いたのでしょう。 

それにしても、何という光景でしょう…立ち止まった僅か数分のうちに光は弱くなって行きました。「急がなくっちゃ…」とまた歩き出した私。 

美しい元宇品の秋が始まりました。 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美