WEST COAST HISTORY 【宇品別世界】

宇品島は,私が物心が付いた昭和40年代になっても「元宇品」ではなく,「向宇品」と呼称する人が大半でした。
同じように島の西海岸は「別世界」と呼ばれていました。 

「別世界」って何だろうと長く不思議に思っていましたが,広島ホームテレビの番組「熟年ファイターズ」(2009年11月28日)で別世界ホテルが特集されて施設名が起源であることが判りました。 

明治時代の中期から,西海岸は宇品干拓を担った服部組の作業場でありましたが,大正 11(1922)年,服部の土地も含めた周辺の土地5,500 坪を「株式会社宇品別世界」が所有しています。そして温泉・宿泊施設,水族館,海水浴場を備えたリゾート施設「別世界」を建設経営しました。当時,関西では宝塚新温泉,関東では花月園や多摩川園などのレジャー施設が相次ぎ開園されており,同様のリゾート開発を目指したものだと思われます。 

昭和3年 廣島瓦斯電軌株式會社 宮島廣島名所交通圖繪(元宇品を拡大)

 
 
 

昭和3年 広島市昭和産業博覧会 賃貸契約書図面 

 

   

ビーチ 別世界海水浴場 

別世界海水浴場は大正の末期から昭和30年代まで長く市民に利用されました。ビーチに至る海岸沿いや山手には桟敷席が設置され,北隅には2階建てのレストハウスが建てられていました。 

砂浜にはブランコや滑り台などの遊具も設置され,子供連れでも楽しめるようになっています。

レストハウス 

レストハウス(休憩所)
休憩所前の砂浜と桟敷

休憩所の2階は座敷になっているようです。寒い時期の写真ではっきりしませんが,軒先に遮光のための藤棚があるので,海の家風のビアガーデンのような設備があったのでしょうか。 

現在のヘルスセンターのように,入浴・休憩・演芸鑑賞ができる施設だったのかもしれません。 

   

アクアリウム (水族館)

この施設も広島市昭和産業博覧会にそのまま利用した記述があります。 

館内には14個の水槽が設置されていて,カメやサンショウウオ,金魚,貝,エビなどの淡水・海水の生き物が見学できるようでした。 

水族館
館内の水槽ようす

カフェ (食堂)&プール

手前が塩水プール,プール沿いにあるのは売店でしょうか?
山沿いに見える2階建ての建物はカフェ(食堂)です。冒頭の「熟年ファイターズ」の放送では,戦後この建物をホテルとして利用していたと説明されていました。 敷地内ビーチ側には軽食用の食堂も設置されていたようです。

昭和3年3月には株式会社宇品別世界が解散し,元宇品土地建物株式会社に所有権が移転しています。翌昭和4年には,広島市昭和産業博覧会の第3会場として利用されます。 

 アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会    
坂谷 晃

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