伐採木のカミキリムシ 

梅雨真っ只中の宇品山の稜線です。雨は一休み、道も乾きました。幹も葉も濡れて瑞々しい。 

ふと見るとガードレールに何か留まっています。
ほっそりスレンダーな君は…バッタのように脚も立派だけど、長い触角からすると…カミキリムシ?金属光沢の輝くきれいな体です。 
名前は『ミドリカミキリ』。 
同じ個体を左から見てみると赤銅色に見え、右から見てみると緑色に見えます。「構造色だ…」 

ミドリカミキリ 2023.6.4 
 ミドリカミキリ 2023.6.4 

「構造色」とは、色素による色ではなく、光の波長程度の微細な構造が、干渉や散乱などの光学現象で見える色のことです。例えば、コンパクトディスクやシャボン玉も、それ自身には色がありませんが、その微細な構造によって光が干渉するため色づいて見えます。構造色の特徴として、見る角度によって様々な色彩が見られることがあげられます。 

モルフォ蝶の翅の構造色は有名です。 
調べてみると、ミドリカミキリはクリやクヌギなどの広葉樹の伐採木に集まるとか。幼虫は菌糸がまん延した木などは嫌がり薪や切断木を好むそうです。 
「福岡県の希少野生生物」には、ミドリカミキリについて…薪が不要になり、クヌギ林もシイタケのホダ木以外に使用されなくなって消滅するにいたり、ほとんど姿をみることが無くなった(2001年版データ)、とあります。西日本では福岡、佐賀、熊本、宮崎で絶滅危惧2類(2021年版)。 
ふーむ、比較的新鮮な伐採木がお好み、ということなんだな。 
宇品山で伐採木と言えば…「あっ、稜線のツブラジイの倒木だ!」 
次の週末、稜線の伐採木を訪問しました。ツブラジイの倒木がチェーンソーで切断されて道路脇に積み上げられているのです。

繁殖のために来ているのでしょうか、切断木の上を歩き回る赤味がかった個体を見つけることができました。 

2023.6.10

参考 
倒木に寄添って – アース・ミュージアム元宇品 (sanpo-motoujina.club) 
東京理科大学 理工学部 物理学科 吉岡研究室(Yoshioka Lab) 
yoshioka-lab.com/research/rsindex.htm 
昆虫探検図鑑1600 川邉 徹 全国農村教育協会 
種の解説|福岡県レッドデータブック (fukuoka.lg.jp) 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美