海辺の出会い【ワレカラのお母さん】

打ち上げられた海藻をさわっていると、突然短い糸くずが起き上がって見えることがあります。ワレカラです。『枕草子』の一節に「虫は鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。螢。」とあります。平安の昔より日本人には馴染みの生き物でした。ワレカラはヨコエビに近い生物で、楊枝をポキポキ折ってつないだような体にはお腹が見えません。ワレカラは泳ぎが下手です。移動するときは前と後ろの脚で海藻をつかみ背中を曲げてシャクトリムシのように動きます。泳がないことにしたので、進化の過程で腹部も不要になったとか…。

マルエラワレカラ 体長約1.2㎝ 2021.5.9(元宇品)

メスは胸に保育嚢(ほいくのう)があり、その中で卵を孵化させます。
赤ちゃんはお母さんと同じ姿で生まれます。

保育嚢が風船のようにふくらんでいますね、よく見ると赤ちゃんの姿が分かります。生まれてしばらくの間、お母さんは子どもを体にくっつけて保護しお世話をします。海辺では「生んだら離れ離れ」の生き物が多い中、ワレカラのお母さんは愛情いっぱいに子育てをするように見えます。海岸で良く見られるのは春から6月頃まで、海藻の上を探しましょう。

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美