マンジュシャカ
9月下旬になると,元宇品では紅い可憐な花が山の斜面や原っぱなどで見られます。
私は秋の彼岸に咲く花として「ヒガンバナ」と呼んで親しみを感じてきました。
阿木陽子さん作詞の歌を歌手の山口百恵さんがマンジュシャカと歌っていたのを思い出します。マンジュシャカとはサンスクリット語で天界に咲く花,紅いという意味だそうです。中国で音訳されて「曼珠沙華」という字が当てられたそうで,法華経によると,釈尊が多くの菩薩のために大乗の経を説かれた時に,天から降った花(四華)の1つが曼珠沙華だったそうです。
仏教に由来する花であり,彼岸の9月頃咲くため,かつては墓地や寺院などの周辺に植栽する事が多かったようです。私の幼い頃の記憶では田んぼのあぜ道に沿って咲いているイメージが強く,母から「被れ花だから触ったらダメよ。」と諭されました。
あぜ道に植えられた目的は,ウサギ,イタチ,モグラ,昆虫などが田畑に穴を開け荒らすのを予防するためです。動物がこの植物の鱗茎に含まれる毒を嫌うことを利用したものでしょう。墓地の場合も,虫除け及び土葬後に荒らされないよう同様の目的で利用されたのだと思います。
元宇品の山の斜面に咲いているのを見かけると,斜面が崩れるのを防ぐためなのか,それともかつてはその辺りにもお墓があったのかしら,と思ったりするのです。
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
坂谷知子