お散歩工作【門松】

MC  シリーズ「お散歩工作」,今日は年末の恒例行事「門松作り」をお届けします。  講師は鱗滝左近次のお孫さん「宇品島坂ジイ」さんです。  
 先生よろしくお願いします。  

坂ジイ はい,よろしくお願いします。
 門松は,歳神様が地上に降りてくる際に家々を訪れる目印となると言われています。また,お正月の準備は苦(九)にならないよう12月28日までに済ませるのが良いとされています。 

MC 元宇品小学校の校歌に「老松繁き丘の上」と歌われますが,松が繁っていたのでしょうか? 

明治38年測量海図
神さん松(イメージ)

坂ジイ 明治から昭和中期まで,島の集落を西風から守るために,小学校の北門から観音寺の墓所辺りまで松の防風林がありました。その景色を歌ったのでしょうね。 明治時代の地図には「松樹全島ニ繁茂ス」と記されています。

その中に(小学校の玄関辺り)神さん松と呼ばれる大木がありました。神さん松には常に注連縄が張ってあり,神霊の宿る木(依り代)として島民が崇拝していたと言われています。このあたりから見下ろす「江村岡」と呼ばれていた地域には,各戸に大きな門かぶりの松があり松林の中に家が建つような風景がありました。 

MC 今日はこの神さん松がかつて立っていた場所で門松を製作します。 

準備するもの 

材料 
 植木鉢,土,松,竹,葉牡丹,南天 
工具など 
 のこぎり,食用油,麻紐,ボロ布,スコップ 

坂ジイ 3本組の竹としっかりした容器を用意します。 置き場所と鉢の大きさを考えて,竹を選び切り出します。元宇品の竹は孟宗竹ですが,細めの竹でないと鉢には入りません。容器の底穴は不要ですが、穴あきの植木鉢などでも代用できます。 

孟宗竹の切り出し

   

MC 切り口が笑っている口のようにみえますね。大笑いしていたり,慎ましく微笑んでいたり,思わずもらい笑いをしそうです。 
 
坂ジイ これ、笑い竹といわれる門松で、「笑う門には福来る」と縁起の良い切り方なのです。 
竹は3本ずつ麻ひもで括ります。その後,表面の汚れを油をしみこませた布で磨きます。 

笑い竹

坂ジイ 竹は,前から見ても横から見ても垂直になるようにセンターより少し後ろ側に立てます。土を半分弱ほど入れて突き棒で突き固めます。竹がしっかり立ったら残りの土を入れますが、あとで松の枝を挿しますのでやわらかめにしておきます。 

葉牡丹を深めに植えます。 

  

MC いよいよ主役の松ですね。 

坂ジイ 若松の枝を挿していきます。余分の枝は適宜剪定します。 
 

  

坂ジイ 赤い実のついた南天などは,最初に作業すると実が落ちやすいので,最後に竹を結んでいる縄などを使って固定します。 

坂ジイ これで完成です。 
MC 今年もcovid-19で大変な一年でしたが,たいへんお世話になりました。禍福は糾える縄の如しと申します。笑い竹にちなんで,幸せな年を迎えられますようお祈り申し上げます。 


アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会 
坂谷 晃

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