【夏は来ぬ】初夏を彩る風景に誘われて

5月の下見の折、ガードレールの傍には卯の花が満開でした。 自然と「卯の花の 匂う垣根にホトトギス・・・・」と口ずさみながら帰り、「夏は来ぬ」の歌詞が気になり調べてみると5番までありました。

この唱歌は明治29年に出来、作詞は佐佐木信綱さん(日本の和歌集 「万葉集」の研究者であり歌人)、作曲は小山作之助さんです。卯の花・ホトトギス・五月雨・田植えの早乙女・ 橘・蛍・楝・水鶏・と初夏を彩る歌詞で夏へ誘ってくれます。 

4番の「楝(おうち)散る川べの宿の・・・・」「楝」とはセンダンの事でした。センダン科センダン属の落葉高木で、大型の葉は互生し2~3回の羽状複葉を付けます。 プリンスホテルから海岸入口側にあるセンダンの大木は今、5月の空に甘い香りの薄紫の小花を枝先にたくさん咲かせています。 

センダンの古名であるアウチやオウチ(楝)は同じ頃に咲く藤の花に色が似ているので淡い藤の花が咲く「淡藤」が転訛した説など語源は諸説あり万葉集や枕草子にも登場する植物です。
 実は秋に熟し腹痛や疝痛に煎じて服用、生の果肉はすり潰して、ひび、あかぎれ、しもやけの患部に塗布するそうです。 樹皮を乾燥させ、虫下しとして服用するなど、薬用植物として使われてきたそうです。一方、実は人や家畜が食べると有毒で中毒症状を起こします。毒と薬は紙一重のセンダンの実ですが、ヒヨドリは食べても平気のようです。  

このような季節感あふれる歌を皆様も一緒に懐かしく口ずさんでみて下さい。

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
森山直美