オオゲジさん、こんにちは。


注)このコラムには大きなゲジゲジの写真が登場しますのでご留意ください。


鳥の声に思わず足を止めました。元宇品の初夏です。

2022.6.25


元宇品の常緑照葉樹の森は真冬でも緑色を失うことはありません。しかし、お天気の良い初夏の森はきらきらと美しく輝き、一年を通して最も鮮やかな緑色に溢れていると言えるでしょう。前を見ても上を見ても、言葉にならない美しさで、歩いているだけで思わず笑みがこぼれます。
7月になったばかりの元宇品、谷から稜線に上がり馴染みのアベマキを見に来ました。このアベマキには大きな「うろ」があり、ここには色々な『むし』がやって来ます。覗いてみると…

うろの写真 2022.7.3 元宇品

甲虫の姿を追って「うろ」の中を覗いた私ですが、何かが見えたような気がして凍り付いてしまいました。見てはいけないものの雰囲気が漂っています。
「うろ」の中、写真の中ほど、暗闇の中に髪の毛のように細い何本もの脚?一瞬では理解できなくて、「えっ、エビ?」などと突拍子もないイメージが浮かびますが、そんなはずは無く。意を決して確かめてみることにしました。細い小枝でちょんちょんと追い出してみます。
うわ~、ひぇ~、すごい勢いで顔の前に飛び出した『脚のたくさんある結構大きな生物』が、ササササ~と逃げて行きます。いやいや、ひるんでいる暇はありません。正体を確かめないと!!
アベマキの隣はコケに覆われた平たん地、あちらに走り、こちらに走り、私もドッグランさながらに追いかけます。


あら~、多分ムカデとか、ゲジの種類だと思うけど、なんてきれいな色なんでしょう。脚の数が多いのもご愛敬、すごいスピードで走れるのは脚の数が多いせいなのかしら。瞬発力はあるけど、耐久力はイマイチかなぁ…。思いがけない出会いに嬉しくて即、ガイドメンバーに写真を送ってお知らせをしました。「今、こんなきれいなすごい生き物がいます、来られる方がいらっしゃったら、お見せすることが出来ますよ~」。「それはオオゲジですね」とすぐに返信がありました。オオゲジ‼あなたは『オオゲジ』さんなのね…

オオゲジ


調べてみると、オオゲジはムカデの仲間で脚は15対30本。洞窟や樹のうろなどの湿った薄暗いところを好み、小さな虫などを捕らえて食べるとか…フーム、こんなに弱弱しく見えるけど、肉食のハンターなんだ…。危機に陥ると脚を自切して逃げるのは、カニと一緒だな。何々、切り離した脚は音を立てながらしばらく動き、敵の注意を引き付けるのか…。ほう、脚先が鞭のようになって獲物を巻き付けて捕らえるんだ…。

脚の拡大写真

すごい!拡大してみると、脚先がミミズの体のように自由に曲がる作りになっていて、関節には棘が、先端には爪があります。複数の獲物を捕らえて巻き付けたまま移動もできるようです。なんて素晴らしい能力!
オオゲジさんの傍らでゆっくりと時間は過ぎていきます。「あなたに会いたい人はいないみたい、人気がないのかしら…」でも、私はこの苔平であなたと追いかけっこしたことは忘れません、ずうっとずっと大好きです。

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美

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