こんなところに何故雌花
コジイの木との出会いは,私がアースミュージアム元宇品の研修中だった初めての野外観察の時でした。
山の上でモコモコとした大きな木が,黄色の花を咲かせて何とも言えない独特の匂いを辺り全体にまき散らしていました。
秋になり,「地球さんぽ」で車道を歩いていると,小指の爪より小さな丸い黒っぽいドングリがたくさん落ちていてました。 「これがコジイの実。このドングリは生で食べられるの」と教えて貰い口にすると栗の味です。ゲストの人達も皆が童心に帰った様に夢中で拾い始めて,予定が狂ってガイドメンバーを困らせるほどでした。
今年,勉強会の担当がコジイ。まずどの木がコジイなのか?から勉強です。
コジイは常緑の樹木で,元宇品の森の中で見上げると比較的高い木が多く,葉裏は茶色。黒っぽい葉っぱのコジイの木が空を覆っています。
今年の春も木の上の方に黄色の雄花が咲き始めました。
4月、手が届く高さのコジイの枝先に赤いカニの爪のような物を見つけ、不思議に思い観察が始まりました。結局それは周りの山のコジイから随分遅れて出た新芽でした。しかしラッキーなことに直ぐ横につぼみの雄花を見つけました。
ヤッター,なぜこんな低いところに雄花が !?
コジイの花は,今年伸びた新枝の下部に雄花が咲き、その上部に雌花が付きます。
咲き終わった雄花の上部に3本の雌花を見つけたとき、そして3本の雌花の先端に白い花が咲いたときは本当に感激しました。初めて見る雌花と,ひょっとしたら来年ドングリの成長を観察出来るかも知れないからです。
いよいよ勉強会が始まりました。
「これは,花が咲いた雌花の写真です。」と説明した時です。参加者から思わぬ指摘がありました。
「雌花の先端の白い花は雄花ですよ。下部のつぼみのように観えるものが雌花です。雌花は雄花のように派手に咲くことはありません。」
「しかし、雌花の先に雄花が咲くこと自体が大変珍しい」とも。
私にとっては衝撃の結果となりました。知らないと間違ったまま受講者の皆さんに伝えてしまうところでした。
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
佐藤美佐子