クスノキの葉ってどんなん?
広島市内の街路樹や神社・公園・学校・病院にはクスノキの植樹を多く見かけます。これはクスノキが「広島市の木」という理由もありますが,クスの葉が分厚く,多く茂るため防音効果があるのが理由だとも言われています。
元宇品の南端にある宇品灯台脇には,樹齢約150年と言われるクスノキがあります。樹の下から見上けると,枝はグニャグニャと大きく手を広げた姿をしていて,上から見るとブロッコリーのようにモコモコしています。元宇品の森の中にはこのようなクスノキの巨樹を何本か見ることができます。クスノキは歴史的にも元宇品を代表する樹木と言っても良いでしょう。
クスノキの近くではさわやかな香りがします。昆虫たちが,葉をかじってキズつけるとその香りが発散します。この香りは樟脳(しょうのう)と呼ばれる物質で,カンフルとも呼ばれ,心臓の弱った人を救う薬として長く利用されました。また,この香り自体を虫たちが嫌うため防虫剤としても使用されていました。
ところが,虫たちを寄せつけないクスノキを平気な虫もいます。それはアオスジアゲハの幼虫です。この幼虫はクスノキの葉を食草としています。
もう一つ,クスノキの葉には『ダニ室』という不思議な器官があります。葉にある葉脈の分岐にはふくらみがあり,ここにダニが住み着いています。1枚の葉で10匹〜50匹はいるそうです。
ダニは何のためにクスノキに住み着くのでしょうか?クスノキはどうしてダニに住処を提供しているのでしょう?
一つは共生説で,カブリダニ類,ナガヒシダニ類のような肉食,菌食のダニがダニ室を産卵場所や避難場所として使い,代わりにこられのダニが葉に害を与える植食性のダニやカビなどを退治しているというものです。もう一つは寄生説です。クスノキに圧倒的に多いダニは、植物に害を与える植食性のフシダニ類で、このダニは春に最も少なくなります。それはクスノキが、ダニ室の入り口を秋には狭くしてダニを中に閉じこめ、春になって、ダニをダニ室の中に入れたまま多くの葉を落としてしまうためらしいのです。クスノキのダニ室は、植食性のフシダニを閉じこめて排除する器官である可能性もあるそうです。
虫たちと植物には本当に不思議な関係が存在しますね。自然ってとても複雑です。
参考論文 葉上の小器官「ダニ室」 名古屋大学大学院 環境研究科 西田佐知子研究室
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
和子