宇品島の歳時記(処暑)
こよみ便覧(べんらん)では 「陽気とどまりて、初めて退きやまむとすれば也」
処暑とは厳しい暑さが峠を越して後退していく頃です。朝夕には涼しい風が吹き,心地よい虫の声が聞こえてきます。暑さが和らぎ穀物が実り始めますが,同時に台風の季節の到来でもあります。
綿樹開(わたの はなしべ ひらく)8月23日〜8月27日頃
明治期には木綿の生産は日本の主幹産業でしたが,耕作地の少ない宇品島では綿花の栽培をしていた記録は確認されていません。
クサギの花が咲き,イヌビワの実も熟しています。熟す前の実を開いてみると,小さなハチが確認できました。
南海岸を歩いていると,どこからかヘリカメムシが飛んできました。クスドイゲの葉にヨツスジトラカミキリがとまっていました。
アベマキの葉に赤い実のような虫こぶがみられました。クヌギハマルタマバチなどが,卵を産み付けるとこのようになるそうです。鳥に啄まれたのでしょうか?道路に落ちていました。鳩に突かれ,最後にアリが巣に運んでいきました。森の中で,抜け目なくちゃっかり仕事するアリたちに感心させられました。
天地始粛(てんち はじめてさむし) 8月28日〜9月1日頃
秋雨前線が,冷たい空気とともに秋を運んできます。
ムラサキンブに実が付き,色づき始めました。
畑ではトンボが乱舞し,今年もセスジスズメの幼虫が登場しました。
畑の法面の雑木にセンニンソウが巻き付き伸びて,白い花が咲き乱れとてもきれいです。花後に果実から伸びた銀白色の長毛が密生した様子を,仙人の髭にたとえたことが命名の由来ということです。仙人の髭はいつ頃観られるのでしょうか?
禾乃登(こくもの すなわちみのる)9月2日〜9月6日
稲穗はこぼれるように実り,色づき始めます。しかし,二百十日を過ぎたこの季節は台風が襲来してくる時期でもあります。
ヘクソカヅラが絡みつき,ノブドウのカラフルな実に目が奪われます。
ヤブガラシの花にはハナムグリがとまっています。 ヤブランの紫の花には緑色に結実したものも観られます。野山は実りの秋ですね。畑の上ではツバメが飛び交っています。「いつ南へ帰ろうかね~」と相談してるのでしょうか?
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
坂谷知子