宇品島の歳時記(白露)
こよみ便覧(べんらん)では 「陰気やうやく重りて、露にごりて白色となれば也 」
白露とは夜中に大気が冷え,草花や木に朝露が宿りはじめる頃。
降りた露は陽の光を反射して,白い粒のように見えます。日中の暑さも和らぎはじめ、だんだんと秋の気配が深まっていきます。
草露白 (くさのつゆしろし) 9月7日〜9月11日頃
早朝の畑では草花の上に降りた朝露が、白く涼しく見えます。涼しさが増し,夏から秋への変わり目を実感します。「露が降りると晴れ」という言葉があり、朝露は1日の天気を伝えてくれます。
7月の下旬から咲き始めたクズの花は,夏の間次々と咲いていきました。涼しさが増してくると,花は順次結実していきます。刈っても刈っても,次々伸びて猛暑の夏を元気に生き抜くクズの力はすさまじいです。
初秋の野原の主役と言えば,アレチヌスビトハギです。原っぱ一面に咲くピンクの花はとても美しいです。しかし,数日経つと,四つ並ぶ種子が衣服に引っ付いてたいへんです。
暮らしの節目節目にくり返される「行事食」には,日本人のスピリットが凝縮されています。 我が家の孫たちは,毎年の十五夜は月見団子をしつらえます。
鶺鴒鳴 (せきれいなく) 9月12日〜9月16日頃
鶺鴒の声が響きわたる頃。
宇品島では全島でハクセキレイをよく見かけます。
釣り人が,釣り上げたギザミを道に放っていました。初夏から秋口にかけてが旬で,煮付けるととてもおいしいのですが,食べないのかしら?
小径を歩いていると,まだ青いドングリが枝ごと落ちていました。チョッキリムシの仕業でしょうね。
晩夏から九月が終わるころまで,森の中にはオオワライタケが生えてきます。次に歩くと根こそぎ無くなっているのですが,持ち帰ってどうするのでしょうか。毒があるようです。
私が幼少の頃,自宅軒下は乾燥した砂地で,よくアリジゴクが巣を作っていました。 久ぶりに巣を発見してとても感動しました。それにしても,幼虫のアリジゴクの怖さと成虫のウスバカゲロウの儚いイメージのギャップがとても大きい昆虫です。
玄鳥去 (つばめさる) 9月17日〜9月21日頃
春先に宇品島にやってきたツバメたちが、暖かい南の地域へと帰っていく頃です。
今年は九月になっても台風の影響で高温が続き,元気よく秋空を飛んでいました。台風一過は気温が下がりそうなので,すでに飛び立ったかもしれません。また来年の春先には戻ってくるので、しばしの別れとなります。
毎日通る道端で夏から秋にかけて咲くピンクの可愛い花,ハゼラン。サンジソウという別名があるらしく,午後3時頃から咲くようです。
マツヨイグサは,夜行性のスズメガに花粉を運んでもらうために夜に開花するようです。オオマツヨイグサとヒメマツヨイグサの違いは花弁の形がハート形か否かによります。ただし私は夜行性でないので,どちらかを確認できません。
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
坂谷知子