シキミとサカキ,そしてヒサカキ

私が仕事であるお宅を訪問した時のことです。玄関にシキミが活けてありました。めずらしいなと興味を持ったので活ける理由を尋ねてみたところ,「シキミが持つ独特な香りや毒気が邪気を払うため,周囲の空気が洗浄され良い気を家に取り入れられるのですよ」と説明されました。

シキミの実が「悪しき実」と呼ばれ,これが名前に由来するお話は聞いたことがあります。
調べてみると,シキミの果実にはアニサチンという有機化合物が含有されていて,猛毒なため人が口にすると死に至ることもあるそうです。なんと,植物では唯一毒劇物取締法によってその取り扱いが規制されています。
(昭和四十年政令第二号毒物及び劇物指定令 劇物 第二条 法別表第2第94号の規定に基づき、次に掲げる物を劇物に指定する。39項 しきみの実)
シキミの実は中華料理の香辛料で使用される八角とよく似ています。誤って口にするようなことのないようにしたいですね。

東京都健康安全研究センター

シキミの実
トウシキミの実(八角)

宗教的な花木の使用について,最近は仏式はシキミ,神道はサカキと区別するようですが,古事記に基づいてサカキを使用する神道に比較して,仏式の土葬に際する動物除けという使用理由は他の宗教も土葬であったことを考えるとあまりに説明が不十分です。現在,宇品島のお墓にシキミが供えられるのは一部の宗派のお墓で、大半が浄土真宗の墓地であるためほとんどが生花です。

また,島しょ部の禅宗寺院では「シャシャキ」(ヒサカキ)しか供えてはいけません。という寺院もあるくらいです。 神仏が分けられるようになったのは明治以降で,すでに土葬から火葬へ移行しています。元は神仏共に「ヒサカキ」だったのかもしれませんね。

シキミ
サカキ
ヒサカキ

この3種類の違いですが,シキミはマツブサ科シキミ属,サカキはモッコク科サカキ属ヒサカキはモッコク科ヒサカキ属です。
葉の形状を見ると一番わかりやすいでしょう。シキミの葉の付き方は一ところから四方八方に広がります。 「サカキ」の葉は表面がツルツルしていて、縁の部分は全縁(ぜんえん)と呼ばれ、滑らかな曲線になっています。「ヒサカキ」の葉は小さく、縁が鋸歯(きょし)のようにギザギザしているのが特徴です。

宇品島観音寺の駐車場にある子安地蔵の上にはシキミが見られます。ひらひらと淡い黄色の花が咲き、緑色の実ができて,それが茶色くなるようすをじっくりと観察してみてはいかがですか。

 アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会  
和子