海辺の生き物【ヒメイソギンチャク 】

2017年の春、元宇品の磯に異変が現れました。 

おびただしい数の生物に磯の一角が覆われてしまったのです。 

ヒメイソギンチャク 2017.6.14 

 自然観察ガイドのメンバーで現地を確認に行きました。
「すごい!これは何ですか?イソギンチャク?」 
「それにしても大発生ですね…何でこんなにたくさんいるのでしょう?」 

この『ヒメイソギンチャク』、元宇品の磯でこのような大発生は見たことがありません。 
宇品灯台が立つ鼻は「だっかけの鼻」と言われ、その磯と鉢ヶ谷の砂浜を挟むように北西側の鼻に磯があります。ヒメイソギンチャクは両方の磯で発生していたのですが、特に北西の海食崖前の磯では岩の割れ目に沿って爆発的に発生していました。 

ヒメイソギンチャク 2017.5.7 

「ヒメイソギンチャク」は大きさ1~3㎝位の小型のイソギンチャクです。体壁には規則正しく縦に並んだ赤茶色い吸着イボが見えます。縦分裂(体が縦に二つに裂けて増える)で激しく増えるので、同じクローンのイソギンチャクが一帯を埋め尽くすことになります。ヨロイイソギンチャク属ですが、攻撃の為の周辺球は非常に少ない~やや多いものまで変異があるようです。ヨロイのようにあまり好戦的ではないのかも…と思っていましたが、写真のように左のイソギンチャクに与えた餌を瞬時に右の個体が奪おうとするのです。「えっ、そんなに素早く動けるんだ…。」両者はぐいぐいと餌を引っ張り合い飲み込んで行きました。 

最初の2017年の大発生から今年で6年目、ヒメイソギンチャクは今はどうなっているのでしょう? 

サミット前の海岸 2023.5.5 
ヒメイソギンチャク 2023.5.5 

過去に大発生したヒメイソギンチャク、数を減らした年もありましたがその後も棲息を続け現在に至っています。写真は2023.5.5 防護フェンス下の大岩の影に密集していました。縦分裂で増えクローンは同じ…あの日のヒメイソギンチャクと同じクローンのイソギンチャクなのかしら…貴方は永遠の命を持っているのかもしれないね。 

参考 
イソギンチャクガイドブック 内田紘臣/楚山勇 TBSブリタニカ 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美