海辺の生き物【マダラウミウシとクロシタナシウミウシ】 

磯の人気者ウミウシ…ウミウシは貝です⁉…ウミウシは進化の過程で貝殻を捨てた巻貝の仲間と考えると良く分かります。体を守る貝殻を捨てたなら、一体どうやって自分を守れば良いのでしょうか? 

それは『毒』です。ウミウシは藻類のほかに海綿動物やイソギンチャク、サンゴなどの毒のあるものを食べ、体内にその毒を蓄積して「食べたらマズイ生き物」になり、捕食者を逃れました。ウミウシは海の宝石と言われますが、その鮮やかな体色は「私を食べるなよ、えらい目に合うぞ!」という警戒色だとも言われますが詳細は不明です。 

エダウミウシ 2020.6.6 

ウミウシにもカープファンが…エダウミウシと思われます、枝のような突起が発光するらしい! 
初夏の元宇品の磯、ウミウシが2匹、3匹と集まっています。 

重なるマダラウミウシ  2022.6.13

雌雄同体、つまり体の中にメスとオスの両方の機能が同時に存在するので、性に関係なく2匹が出会ったら必ず交尾行動ができます。機能的には出会えば必ず交尾に至れるウミウシですが、その先の事情は複雑で精子は簡単には配偶相手に受け入れてもらえないようです。 

【マダラウミウシ(クロシタナシウミウシ科)】 

漢字で書くと「斑・海牛」、橙色に大小の黒い斑紋が良く目立ちます。 
体の前方に小さな触角が2本と背側後方に花のような二次鰓(にじえら:体外にある呼吸のための器官)が見えます。 
元宇品では初夏の干潮時、岩の根元を海側から探すと繁殖行動をしている個体が見つかります。元宇品では10cm近い大型の個体も見られました。 

マダラウミウシ 2022.6.14

下方に二次鰓がみえます 

【クロシタナシウミウシ(クロシタナシウミウシ科)】 

漢字で書くと「黒・舌無し・海牛」。この仲間は、口の中に歯舌が無く餌を吸い込むように食べるので、舌無し、と言われます。体はとても柔らかく周縁部はフリルのように波打ち鮮やかな黄色です。マダラウミウシと同じ種とする研究者もいますが別種としました。 

クロシタナシウミウシ 2019.7.12

下方に花のような二次鰓 

これらは元宇品で見られたウミウシの卵塊です。産卵の時期として7月末は少し遅めでしょうか…ウミウシは中心から外へと反時計回りにリボン状の卵塊を産みます。多分マダラウミウシか、クロシタナシウミウシのものと考えられますが判別が付きません。色々な記事をあたっていると、マダラウミウシを水槽で飼うと環境変化が刺激になるのか、飼い始めて間もなく産卵をすることが良くあるようです。

2021.7.24
  2022.5.29 

参考 
ウミウシ学 平野義明 東海大学出版会 
写真で分かる磯の生き物図鑑 トンボ出版 
三番瀬水槽管理人の浦安水辺の生き物図鑑 
マダラウミウシ|ウミウシのなかま|浦安水辺の生き物図鑑 (sanbanze-suisou.icurus.jp) 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美