海辺の生き物【フジツボのからだ】 

元宇品の海岸で拾った貝殻を洗っていました。真水で良く洗って貝殻を救い上げたとき「あっ!」 

小さなフジツボの体を見つけました、拾った貝殻に付いていたのでしょう。 

フジツボは石灰質の硬い殻を持つので貝の仲間と思われがちですが、実は立派な甲殻類なのです。19世紀初めまでフジツボは貝であると考えられていました。しかし、エビやカニなどの甲殻類に共通するノープリウス幼生期を経ることが明らかになり、甲殻類に分類されるようになりました。19世紀半ばには、あの、チャールズ・ダーウィンがフジツボに情熱的に取り組み、系統的な研究を行い分類学的な基礎を築きました。ダーウィンは手紙のなかで「フジツボこそ自然淘汰に対する理解を深めてくれた」と告白しています。 

フジツボの全体を見ると富士山のような火山に似ています。山は「周殻・しゅうかく」という6枚の板で囲うようにできています(枚数は種によってまちまちですが、圧倒的に6枚が多い)。火口には蓋の役目をする「蓋板・がいばん」があります。この中にエビが仰向けに寝そべったような体が殻の底にくっ付いています。 

フジツボのフィギュア( 発行:奇譚クラブ)

 

フジツボは殻から「まん脚」という熊手のような脚を出し、おいでおいでをしながら水中の小さな餌をかき集めて食べます。 

体を観察してみましょう。 

「まん脚」は12本、短い方は「顎脚」と言いこれも同様に12本あります。それぞれから毛が生えているのが分かります。顎脚の根元に口があり、まん脚で水中の餌を寄せ集め、「顎脚」でその餌を口に運びます。 

前体部には胃や消化管などの内臓があります。

 「おっ!」雄性生殖器が見えます。 

フジツボは雌雄同体でほぼすべての個体が雄性生殖器を持ち、生殖器を伸ばすとその長さは体長の8倍にも及びます。フジツボは一度固着すると自ら移動することはできませんが、仲間の隣近所に固着することができればこの長い生殖器を用いて生殖行動は可能になります。フジツボにとって最終的に固着する場所は、子孫を残すうえで大変重要になります。 

参考
フジツボ 魅惑の足まねき 倉谷うらら 岩波書店 
フジツボ類の最新学 日本付着生物学会 恒星社厚生閣 
フジツボ ペーパークラフト.pdf (kitasato-u.ac.jp) 北里大学海洋生命科学部 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美