土柿日記(つちがきにっき)

【6月30日(金)】 夜半に広島県南部地域に広く大雨警報が発令され、元宇品小学区にも避難指示が出るほどの降雨がありました。元宇品、大丈夫かなぁ。 

【7月1日(土)】明日は吉島干潟の観察会…明日できるかどうか、吉島干潟を下見。その帰りに元宇品を訪問。17時過ぎ宇品山到着。目的は先日見つけた変形菌の測定です。雨で流れてしまう前に測らなければなりません。海岸まで降りると、落ち葉と土砂が押し流された勢いで水路の蓋が外れていました。 

小規模の崖崩れもあったようです。変形菌を測定した後、小径を通って灯台まで戻ることにしました。日も暮れかかりましたが、西日が真横から斜面を照らして辺りも良く見えます。足元のキノコを踏まないように歩みを進めると… 

「うわぁ、クリーム色のツチグリだ~」「嬉しい、去年見たエリマキツチグリがこんなところに?」 

大雨に打たれたせいか真ん中の子実体が無くなっています。葉陰にはきれいなものがあったのでいくつか写真に撮りました。写真を撮りながら「このツチグリ、可愛いけど小さい~~」「うーむ、一ケ所から2つ、3つとツチグリが出ているぞ」 

家に帰って写真を眺めながら、その大きさとキノコの出方が気になってきました。エリマキツチグリならもっと大きいし…、「もしかして、別の種類とか?!」 
キノコの図鑑をひっくり返し、インターネットで見比べていくつか候補が浮かびました。
「シロツチガキ」と「フクロツチガキ」、小型の「ヒナツチガキ」というのもあるのか…もっと観察が必要だなぁ。 

【7月3日(月)】 
今日は夕方時間を作って再訪しました。周辺を探すと幼菌や開きかけたものもありました。 

この仲間の分類には、発生場所、円座の有無、大きさ、内皮の基部の柄、孔縁盤(胞子を出す孔)、外皮の様子などが重要です。 
現在の候補は「シロツチガキ」「フクロツチガキ」「ヒナツチガキ」です。 
シロツチガキとフクロツチガキの一番の違いは、写真ので指している子実体の円座の有る、無しです。 

シロツチガキの場合、円座は無いか不明瞭とのことですが、この写真を見てどう判断すれば良いのか迷ってしまいました。丸い円座が有るような…これは、有る?不明瞭? 
その一方で、見れば見るほどヒナツチガキの可能性も捨てられません。 
ヒナツチガキは、夏~秋、広葉樹・針葉樹の落葉上。マット状菌糸から生じるとか。 
白色の菌糸マットか、あったかなぁ、うーん、気が付かなかった…。 
もう1回行ってみるか~~ 

【7月4日(火)】 

現地には夕方到着、標本としてキノコ本体とその下の落ち葉の層を採集。 

現地ではキノコの生えている周辺を調べました。ここは緩い傾斜地に落ち葉が吹き溜まったようになっています。キノコの生えている下地は落ち葉の塊にはなっていましたが、マット状になっている白い菌糸は確認できませんでした。色々調べているうちについには「ヒナツチガキモドキ」の存在にも行きつき…これは、もう専門家にお聞きするしかない! 

【7月5日(水)】 
キノコの先生に写真をお送りしてメールで質問、その後標本をお送りしました。 

【7月6日(木)】 
キノコの先生よりお返事が来ました。 
写真を見た限りでは、円座があるように見えるのでヒナツチガキかも知れないということでした(モドキはヒナに比べて子実体がより小さく成熟しても外皮が反転しません、とのこと)。 

【7月8日(土)】 

雨上がりで16:00宇品山着、再び降雨が激しくなったので下山、途中に倒木あり。そのまま帰宅。 

【7月9日(日)】 

子実体は既にしぼんでいました。 

【7月17日(月)】 
キノコの先生より標本についてのメールを頂きました。 
標本のキノコは「シロツチガキ」のようです。胞子の形態はさほど近縁種と差はないのですが、弾糸(胞子と混じって存在)の細胞内の隔壁がありますので区別が出来ました。その他の近縁種にはありません。とのことでした。 
名前が分かるって本当に嬉しい!嵐が静まったような安心がありました。ツチガキは漢字で書くと土柿、キノコの外皮が開いた様子が土に落ちた柿に見えることからそう呼ばれたようです。 

参考 
シロツチガキ Geastrum fimbriatum ヒメツチグり科 Geastraceae ヒメツチグり属 三河の植物観察野草 (mikawanoyasou.org) 
「ヒナツチガキモドキ」のこと: ささやき (nedoko.sblo.jp) 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美