宇品島の歳時記【晩夏のクスノキ】

 

8月末,暑さが厳しい日中に自宅から海を眺めていると,消防艇が元気よく放水しています。「何をしているのかな?」と疑問に思っていると,しばらくして大きな客船が入港して来ました。来広歓迎の放水だったのですね。 

宇品島では良く観られる光景です。 

8月の観察項目となっていたクスノキですが,灯台前のクスノキは宇品島のシンボルツリーと言われています。8月の勉強会でも「樹齢何年でしょうか」と話題になっていました。樹高、幹の周径、根回りなどから推定する方法もありますが, 正確な樹齢を知るためには年輪を数えるしかなく,木には優しくないですよね。 

大木の樹齢は「盛られる」ことが良くあり,私が宇品島に来た頃には樹齢300年と表記されていました。 

現在は160年と言われておりますが,明治8年(1875)年に嚴島神社の大鳥居建立の時,屋根板に宇品島のクスノキの大木が多数使用された記録に基づくと,150年くらいが妥当と思われます。 

クスノキは常緑樹です。通常は春先に古い葉を落として新しい葉に入れ替わります。ところが最近では夏にも異常落葉が観察されます。 

異常気象から自らを守る術なのでしょうか? 

夏から秋にかけて落葉する葉には褐色の斑点が見られます。病気や害虫被害の可能性も考えられます。 

調べてみると葉の褐色斑点はクスベニヒラタカスミカメというカメムシの仲間が吸汁した跡であるという記事を見つけました。このカメムシ,2015年に中国大陸南部から日本に侵入して関西地方で最初の被害が発見された後,各地で被害が報告されるようになったようです。 

落葉した枝には新芽が出て若葉が育っています。 

異常気象や外来昆虫の影響に対して自ら対策するクスノキ,本当に自然の力は偉大です。それにしても,年に2度も新芽を出すのはクスノキにとってはとても負担が大きいのではないでしょうか。 

宇品島の代表木クスノキ,大切に見守りたいものです。 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会    
坂谷 知子