宇品山・ラクウショウの紅葉
今年の夏は暑く、長く、雨も無く…シダの群落は枯れ木々は樹勢も弱々しく森を歩くと土埃が舞い、宇品山は少雨酷暑に必死に耐えているように見えました。終わりのない夏に思われましたが、秋は忘れずにやってきたようです。色とりどりの落ち葉に秋を感じながら稜線を灯台に向かって歩いて行きます。
森の木々の間からちらちらと赤い樹冠が見えました。
宇品山は常緑照葉樹林の森として知られており、四季を通じて濃い緑色を保っています。その中で赤や黄色は大いに目に付きます。 「うわぁ、綺麗な赤、黄色、ピンクに朱鷺色…何の木の紅葉かしら」
2023.11.12
「ラクウショウでは?」
「ラクウショウはもっと茶色いと思ってました、こんなに見事に紅葉するんですね…」
ラクウショウは沼のほとりなどに生育することからヌマスギ(沼杉)とも呼ばれ、こちらを標準名としている例も多いそうです。北米原産のラクウショウですが、こちらのものは戦後宇品山に植えられたものと推察しています。(参考**) 数日後、灯台園路のラクウショウを訪ねてみました。
紅葉の見ごろは過ぎたようでしたが、見上げたラクウショウの樹幹は輝いていました。ラクウショウの名前の由来は、木の枝葉を鳥の羽根に見立て、これが秋に落ちるため「落羽松」の名がついたとか。雌雄同株でヒノキ科の落葉針葉樹です。
今日は、低気圧の移動で松山行きのフェリーが欠航するくらいの強い西風が吹いています。 突風が吹いたかと思うと、名前の由来通り突然木の葉が雨のように降り注ぎました。
見回すと、まだ青いラクウショウの実がたくさん転がっていました。
「そうだ、この辺りに気根があったはず…」
ラクウショウの木の周辺には膝根と呼ばれる気根(根の一部をタケノコのように地上に出しているもの)があります。これは、水中や過湿土壌などで普通の根ではうまく呼吸が出来ないため、根の一部を地上に出して呼吸をしているのだと言われています。
この呼吸根は、公園など普通に植樹されている所ではほとんど見られないということですが、谷底に当たる灯台園路周辺のラクウショウでは幾つか観察することができます。
参考
*新宿御苑・歴史巨樹シリーズ ラクウショウ : 新宿御苑 | 一般財団法人国民公園協会 (fng.or.jp)
**宇品山・樹木名板の謎 – アース・ミュージアム元宇品 (sanpo-motoujina.club)
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美