ミノウスバ、海老フライのような蛾
秋も深まった元宇品です。
山中では、傷んだ網に留まるジョロウグモや時折クロコノマチョウが飛んできたりしますが、「動くもの」は随分減ってきました。
森を抜けて海岸に到着。
朝は6℃と冷え込みましたが、秋の陽がぽかぽかと暖かい海岸遊歩道です。「おや!何の虫だろう?」
櫛のような触角、オレンジ色の胴体でぼさぼさの筆のようなしっぽを跳ね上げて…名古屋城の鯱(しゃちほこ)のような蛾です。えーと、何だったかな…
2023.11.21
「ミノウスバ」、オレンジ色のエビフライと言われる蛾です。あっ、鯱(しゃちほこ)じゃ無かった、海老フライだったか…。
最初に目につくのは黒枠で半透明なステンドグラスのような綺麗な翅です。櫛のような触角を持つ方がオス、メスの触角は糸のようです。ミノウスバの幼虫は無毒ですが、たまに接触でかぶれることがあるようです。
オスの触角は櫛状です。
卵で越冬したミノウスバは、春先に孵ると幼虫は集団を作ります。幼虫は食欲旺盛でニシキギ科のマサキなどをモリモリ食べ、5月には蛹になります。蛹の期間は長く、夏を越えさらに秋も深まり朝夕が冷え込む晩秋の11月、やっと成虫になります。成虫は口が無いので餌は取らず、交尾の後メスは、幼虫の食草になる植物に生んだ卵を自分の体の毛で覆い、寄添いながら一生を終えます。
メスの触角は糸状です。
ミノウスバは孵化した後、その一生の大半は蛹で過ごすということか…
それにしてもこんな晩秋に成虫になるとはユニークです。
元宇品の海岸遊歩道では、ミノウスバのメスがマサキの枝の先端に卵を生みつけていました。
2023.12.2
春になって卵から孵った幼虫は目の前の柔らかな新芽を食べることができるでしょう。
もう少し良く見たい…そっと枝を引き寄せてみたのですが、メスは飛び去ることも無く卵の傍に留まっていました。
参考
昆虫探検図鑑1600 川邊 透 全国農村教育協会
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会 副代表 畑 久美