アリグモの観察 其の1
GWの後半、元宇品を訪れた私は色々なところで時間を使ってしまい大急ぎで島の稜線を歩いていました。照葉樹林の中を抜ける道沿いのガードレールは私のお気に入りの観察ポイントですから見逃すことは出来ません。あれれ…アリにしては細長いような…そもそもどちらが頭なのか…。
あ~っ、アリグモです。脚、脚の数!アリグモはアリに擬態したハエトリグモです。アリの触角に見えるよう1番前の両脚を天に上げて、残りの6本の脚で歩く姿はアリそっくりです。アリグモは、蟻酸という毒を持つアリに擬態することで敵から攻撃されにくいという利点を獲得しました。
写真説明:オスは巨大な上顎を持っており、オスどうしは上顎の大きさで優位が決まるようです。
ハエトリグモ科のクモは獲物を捕るための網は張りません。歩いては止まり歩いては止まり、時に大きなジャンプで獲物に飛びつきます。クモの脚には縮めるための屈筋はありますが伸ばすための伸筋がありません。では,どうやって縮めた足を一瞬で伸ばしてジャンプするのでしょう・・・このジャンプ力は筋力ではなく、体液を瞬時に脚に送り込むことで得られています。
写真説明:【マミジロハエトリ】
ところが、アリグモはアリのような細長い体と脚になったため、体内の液圧の調節が難しくなり、ジャンプ力が一般的なハエトリグモの1/3程度になってしまったとか。当然、獲物の捕獲能力は低くなってしまいました。その補いとしてでしょうか、小さなムシを捕らえるほかに、アカメガシワの蜜やアブラムシの甘露などを飲むことが報告されています。
写真説明:アカメガシワに群がるアリたち
クモの眼は8個あります。正面の大きなヘッドライトのような眼の両脇に小さな眼が一つずつ、右横に2つ、左横に2つ、合計8個です。クモはあまり目が良くないと言われますが、ハエトリグモの視力は抜群に良く獲物を眼で確認して捕まえます。
観察していると…アリグモは「彷徨い歩き」をしながら度々アリに出会うのですが、出会った途端にびっくりしたようにアリを避けて歩いて行きます。小心者のアリグモさん、どんなお顔をしているの?
写真説明:ヘッドライトのような眼!顔を見るとアリグモは、「アリ」ではなくて「クモ」だということが良く分かります。
まあ、なんてキュートなお顔なんでしょう…あなたが大好きになってしまいました。
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美