美しい夏のクモ【サツマノミダマシ】
自然観察ガイドの会では年に幾度か学校支援の活動をしています。近隣の小学校の自然観察のお手伝いです。
ある自然観察日、海岸に来ていた子どもたちが地面を指さして声を上げていました。
「見てみて!すごくきれいなクモ!」
「本当~~、きれいな緑色~~」
「うわぁ~、初めて見たよ、めっちゃ綺麗!」
この美しい緑色のクモは『サツマノミダマシ』と言います。陽当たりの良い森の縁や茂みが好きで、垂直円網を張り夜に活動します。昼間は網の縁で休んでいることが多いのですが、元宇品では海岸遊歩道に這い出しているところに良く出会います。
『サツマノミダマシ』という和名については…薩摩?・蚤?・騙し?…いえいえ本当は、サツマの実・騙し、ハゼノキをサツマと呼ぶ地方があり、ハゼノキの実にそっくりなクモという意味です。このクモの写真は去年の夏のものです。コラムに掲載しようと思っていたのですが、ハゼの実の写真を撮り忘れてしまい、今年のハゼの実が育つのを心待ちにしていました。
ハゼノキは雌雄異株の落葉高木です。高木の実の写真は撮り難いのですが、元宇品は島の稜線に沿って道路があるので、谷に生えている樹木の梢を目の前で観察することができます。
さて、カレンダーは7月、雨が上がったので、「さぁ、今日こそは『サツマの実』の写真を撮るぞ~」と張り切って出かけました。
初夏のハゼノキの実はつやつやと美しい緑色をしています。この実、それぞれに頭と手足?を付ければクモになって一斉に動きだすのではないかしら…(笑)
稜線沿いを足取りも軽く観察を続ける私に黄緑色が飛び込んできました。クモがいます…これは『サツマノミダマシ』?それとも近縁種の『ワキグロサツマノミダマシ』?
『サツマノミダマシ』のお腹の両側には黄色い帯が前後に走っています。『サツマノミダマシ』は背面も腹面も色は緑、『ワキグロ・・・』はその名の通り黄色い帯より腹側はこげ茶色になります。
あぁ、背中もお腹も緑色、『サツマノミダマシ』です。また、大きな蝕肢、頭胸部に比べて腹部はやや小さく後ろに向かって細くなっているのでオスと思われます。オスに会うのは初めて~~大喜びで観察する私の頬は地面にくっつきそうです。雨上がりの午後、活動を始めたオスは早足で森へ帰って行きました。
ハゼノキについて、以前『キツネの小判』というコラムで紹介しています。キツネの小判 – アース・ミュージアム元宇品 (sanpo-motoujina.club)
アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美