海辺の生き物【ヒザラガイ】 

磯の観察会で子ども達が興奮して「すごいものを見つけました!」「変なものがあるので来てください!」「虫ですか?貝ですか?」そんなときの謎の生物はしばしば「ヒザラガイ」です。 

ヒザラガイとは「膝の皿」という意味、この仲間はかなり原始的な体の作りで、巻貝や二枚貝とは別の過程を経て進化をしたと考えられています。背中にある8枚の殻板の周囲の肉帯部分には鱗片や棘の束、ひげ状突起などがあり、名前を決める手掛かりになります。 

ヒザラガイは「歯舌」が良く発達し、先端部が鉄でコーティングされているので磁石を近づけるとくっつきます…ヒザラガイの歯は生物がつくる鉱物の中で最も硬く、高強度材料の開発という観点からも注目されてます。

2021.4.11 

〇ヒザラガイ クサズリガイ科 

2022.6.26 

最も一般的なヒザラガイです。夜行性で昼間は潮間帯の岩のくぼみや岸壁の石積みのすき間でじっとしています。剥がすとゆっくりと体を丸めていきます。肉帯上の棘の大きさは揃っていて目の詰まった絨毯のようです、また、殻板には「八の字」模様、肉帯は濃淡のしま模様が見えることもあります。 

〇ケハダヒザラガイ ケハダヒザラガイ科 

2019.5.25 

体は丸に近い楕円形で、肉帯が広く小さな殻板は重なっているというより並んで見えます。殻板の両横に9対の棘の束があります。 

〇ババガセ ヒゲヒザラガイ科 

2022.5.15 大潮の干潮時の観察会で

 「ババガセ」は肉食のヒザラガイです。剥がすと、ぐにゃりと曲がり「ババガセ=婆が背」とのこと。肉帯にひげ状の突起(赤〇)があります。写真の右側が前方で,前方の肉体は後ろより幅が広くなっています。この前方の肉帯を持ち上げすき間を作り、その空間に入り込んできた小型の甲殻類などを押さえ込んで食べます。 

2023.6.16 

前方の肉体を持ち上げているのが分かりますか? 

ババガセは潮間帯のいちばん低い所に棲んでるので、大潮の干潮時に探してみましょう。 

参考 
貝のからだ 倉持卓司 技術評論社 
写真で分かる磯の生き物図鑑 トンボ出版 
大柿町の海辺の生き物 広島県大柿町 
ヒザラガイの「磁石の歯」形成に関わるタンパク質を同定-磁鉄鉱の環境に優しい合成法に生かせる可能性- press-190221-5.pdf (okayama-u.ac.jp) 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美