元宇品の海辺の生き物【アオウミウシ】 

小学生と一緒に海辺の観察をしているこの磯は、広島港の松山行きフェリー桟橋が目と鼻の先にあります。 

大潮で干潮の磯に来ました。普段は見えない岩や海底の生き物に会えるかもしれません。お天気が良く潮の引いた7月の磯は、強い日射、焼けた岩、乾燥とたいへん厳しい環境です。 
岩礁の表面を探っていたら、ちょっとした岩棚に縮こまった小さな塊が見えました。 
「あれっ?あっ!えーー!」驚きで言葉が出てきません!私は大急ぎで海水の入った容器に放ちました。それはゆっくりと開いていきます。 

良かった、二次鰓が開いた~~まだ生きていました。元宇品で『アオウミウシ』が見られるなんて、なんという幸運でしょう! 

この『アオウミウシ』、青い体に黄色と黒の斑紋は個体差があります。触角と二次鰓の縁取りは赤く、普通種でありながらこの完璧な配色で絶大の人気を誇っています。ウミウシは海の宝石とも言われます。 

広島湾はアオウミウシだらけというダイバーもいるほどで、江田島辺りではしばしばみられるのですが、元宇品の観察会ではあまり見られません。餌がクロイソカイメンなのでそれが少ないことも関係があるように思います。 

2023.7.4 

鰓は水中で呼吸をするための器官ですが、軟体動物の外套膜の下に房状の鰓が対を成して配列する(祖先的な配列をする)ものを一次鰓、体の他の場所から鰓が突出するもの、これを二次鰓といいます。 
アオウミウシは軟体動物の巻貝の仲間で、心臓よりも後ろにむき出しの鰓を持つので、後鰓類(こうさいるい)の裸鰓目(らさいもく)に分類されます。体の後方に鳥の羽のような鰓が開いた花のように並んでいます。 

美しい花のような二次鰓の真ん中にある小さな管が「肛門」で、ウンチはここから出てきます。海辺の生き物の体を観察していると、なぜ、こんなレイアウトに??という疑問がしばしば浮かんできます。 

思いがけないアオウミウシとの出会いに、何枚も写真を撮ったりガイドメンバーに報告したり…大興奮の私。汐が満ちてくるまで、まだまだ時間はあったのですが観察は止めてしまいました。だって、「嬉しすぎて他はもう何も見えない…」のですから。 

参考 
ウミウシ学 平野義明 東海大学出版会 
大柿町の海辺の生き物  広島県大柿町 

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
副代表 畑 久美