落ち葉の下の貝・元宇品のアツブタガイ

最初の開花は広島か、という桜予報に反して、長雨で寒い日が続きすっかり待ちぼうけの3月の終わりです。降り続いた雨が上がったので宇品山を訪問しました。

山頂の切通しの斜面は、ツチグリやコケの観察ポイントです。石垣の上を観察していると

あそこにも、ここにも…小さな巻貝を見つけました。カタツムリの子どもではありません。

生きているのか死んでいるのか…殻口を見てみると、白くて平べったい渦巻でできた貝のフタがありました。

「アツブタガイ」です。セトウチマイマイなどの一般的なカタツムリとは縁遠く、貝殻にフタを持つタニシ科の陸貝です。低山のやや乾燥した広葉樹林の地表に生息するということですから、宇品山はぴったりでしょう。

ひっくり返して裏から見ると、大きなへそが開いています。貝の殻は時計回りに、ふたは反時計回りに渦を描いて成長しています。石灰質の厚いふたは段ボール状の作りになっているそう…見た目よりも軽くて丈夫なのでしょう。

幾つかのアツブタガイが、乾ききらない土壌の縁に露わに転がっています。

落ち葉の下でひっそりと暮らす貝がどうしてあちらこちらで見えるのでしょうか…雨上がりの斜面を見上げながら考えました。

宇品山に降った大量の雨は落ち葉の層で留まった…その時アツブタガイは浮力でぷかりと浮き上がり、水の流れに乗って斜面を下ったのではないかしら…

もう少し暖かくなったら、この落ち葉の森で活動している姿を見ることができるかも知れません。

参考

秋季企画展『身近なヤマタニシの体』に関するツィート|豊田ホタルの里ミュージアム・下関市立自然史博物館 (note.com)

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会

副代表  畑 久美