元宇品の思い出

1950年代,小学生だった私は宇品の千暁寺の近くに住んでいました。元宇品はまだ遠い存在で,その頃はまだ向宇品と呼ばれていました。昼間も暗く少し怖い場所だったのですが,同級生が元宇品に生えている細い竹とひごで杉鉄砲を作り,杉の実を弾にして,撃ち合って遊んでいるのを羨ましく見ていた事を思い出します。

その頃の私の小学校にはプールがなく,夏には元宇品へ海水浴に行きました。運動神経が悪い私は泳ぐことが出来ず浮袋で遊んでいました。

元宇品は海岸道路も整備されておらず,カキやカラス貝が付いた岩場が広がっていました。着替えが出来る場所を探して岩場伝いに歩き、手や足を傷つけることもしばしばでした。

正直、海水浴はあまり好きではなかったですが,父親に少し沖の飛び込み台まで連れていかれ飛び込んだりしたことや,足に触る藻の感触が思い出されます。近所のお兄さんと元宇品の海へ行き泳ぎを教えてもらった時,ついに,手足を伸ばしてじっとしていると浮くことを体感できました。それからはすこし水が苦手では無くなった様に思います。

そういえば、暁橋のあたりで父と夜釣りをしました。初めての釣りでエサの付け方とか投げ釣りの仕方とか教えてもらったような気がします。小さなチヌが釣れて喜んだ気がします。近くの船の明かりで波がキラキラしてきれいだったな。

それから数年経ち,高校になってから友達と元宇品へ行きました。海岸に出るのには水族館があり入場料を取られるので,階段を登って海岸へ出たように思います。今思うと、展望台への階段を上がって海岸に出たのだと思います。そのあと海岸を歩いたのか何をしたのか思い出せません。

その後の元宇品で思い出すことと言えば、大学のヨット部のクラブハウスがあって,時々港で見たヨットの帆ぐらいかな。

広島を離れて数十年,年老いた両親に会いに帰っていた頃,気晴らしに散歩がてら元宇品へ行きました。暁橋あたりから見る元宇品は緑が生き生きと茂り何やら元気を感じました。「風の谷のナウシカ」に出てくる「王蟲」を思い出しました。いつも、そこにいて元気をくれる元宇品、ありがとう。

アース・ミュージアム元宇品 自然観察ガイドの会
タツノオトシゴ

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